【連続インタビュー】合同会社型DAO「Re: Asset DAO」に聞く〜分かち合いの経営で、見過ごされた価値を取り戻す〜【中編】DAOのまちづくりに、誰が、なぜ関わるのか。

DAOで、まちづくりを拓く。

小豆島の古民家宿を再生し、価値あるものを磨き直すRe: Asset DAOの挑戦。その裏には、理念に共鳴し、自らの役割を見出した多様な参加者たちの存在があります。中編では、DAOという仕組みがなぜ人を惹きつけるのか、そして「共に経営し、共に育てる」コミュニティ投資の実態について、代表・山田健太郎さんに語っていただきました。
  • 語り手:山田健太郎さん(Re: Asset DAO合同会社代表)
  • 聞き手:さわくん(ランニングホームラン株式会社「コンセプト神」/DAOの哲学的側面を研究中)

誰がDAOに共感し、参加しているのか?

さわくん
現在の資本主義競争に沿ってまちづくりを進めると、町はただ消耗していくだけ。だからこそ、町全体の価値を最大化するためにDAOのスキームを活用しているわけですね。

実際、どんな人がこの理念に共感し、参加しているのでしょうか?

山田健太郎さん
まずは、その地域に昔から根付き、町を愛している人たちです。作っては壊す都市開発ではなく、町の歴史やコミュニティを大切にしたいという想いを持っている。ただ、こうした想いがあっても、一事業者だけでは実現が難しい。そこでDAOという大きなコミュニティを通じて、共に挑戦できることが魅力になっています。

また、理念に共感し、「できることから始めたい」と考えるサラリーマン層も参加しています。合同会社型DAOの特徴の一つは、少額から投資できること。「日々働いて得たお金を投資するなら、少しでも社会貢献につながるところを選びたい」そんな思いが、彼らをDAOに惹きつけているのかもしれません。

さらに、企業がCSR活動(企業の社会的責任)の一環として投資を決めるケースもあります。地域貢献や社会の持続性を重視し、この活動に共感してくれている。DAOならではのWeb3.0の技術を活用することで、企業が支払ったお金の流れが透明化されるという点も、企業側にとってのメリットになっています。

DAOだからこそ「共に活動している」と言える

山田健太郎さん
これまでのCSR活動では、企業が資金提供した後、そのお金がどのように使われたかが見えにくかった。けれども、世間の目や銀行の融資基準が厳しくなる中で、DAOの仕組みを活用すれば、「ただお金を出しただけ」ではなく、「共に活動している」と胸を張って言える。Web3.0の技術によって、単なる支援ではなく、「参画している実感」が得られるのです。

さわくん
その地域に縁のない人は、なぜその地域に投資するのでしょうか?

山田健太郎さん
実際の参加者の声を聞くと、大きく分けて3つの理由があることがわかります。

一つは、「DAOという仕組み自体が面白い」という好奇心。新しい投資の形に興味を持ち、DAOのスキームを体験したいという動機で参加している人がいます。

二つ目は、「地方創生の新たな仕組みとしての可能性」に期待している人たちです。これまでは、地方創生を目指したくても、複雑な利害関係や制度の壁などが存在し、思うように進まないケースも多かった。しかし、合同会社型DAOの仕組みを使えば、価値の最大化を目指す資金調達が可能となり、そうした課題を乗り越えながら、町が町として機能する新たな形を模索できるのではないか。そんな思いで参加する人も増えています。

三つ目は、「経営に興味があるが、一人では始めにくかった」という理由。個人で事業を立ち上げるにはリスクが大きいが、DAOなら少額の投資で経営に関われるため、「自分も経営に関わっている」という感覚が得られることが魅力になっています。こうしたDAOの仕組みは、ソーシャルグッドな投資や経営に関心がある人にとっても、注目されています。小豆島の島みがき宿経営では、地域の文化や自然を守りながら投資としてリターンを得られる点が、多くの参加者にとって魅力になっています。資本主義の競争に巻き込まれるのではなく、「価値を最大化する投資」ができることに、魅力を感じる人が多いのだと思います。

リワードトークンとは?Re: Asset DAOにおけるリターンの仕組み

さわくん
投資をするうえで具体的なリターンは重要ですよね。Re: Asset DAOのリワードトークンについて詳しく教えてください。

山田健太郎さん
Re: Asset DAOでは、リワードトークンを通じて社内優待(合同会社で言うところの配当に近いもの)を受け取ることができます。年に一度の財務発表会で利益を確認し、その中から社内優待の額を決定します。利益が出た年は配当が発生し、赤字の年は配当がない場合もあるという仕組みです。

合同会社型DAOの中で「どのようにトークンを分配するのか」を意思決定できる点も、大きな特徴のひとつです。「どんだけ利益分配すんねん!」という問いに対して、参加者みんなで議論を交わし、さまざまな意見が飛び交うことになりそうです。こうしたプロセス自体がDAOの醍醐味です。面白いですよね。

リワードトークンは、すぐに宿泊権と交換することも可能ですが、長期的に保有することで、より大きなリターンが期待できる設計になっています。

さわくん
どのような設計があるのでしょうか? リワードトークンの成長と再投資の仕組みについて教えてください。

山田健太郎さん
例えば、5年ほど保有すると1250トークンが貯まる設計になっています。これは、DAO内部に2000万円の利益が蓄積された状態に相当し、その利益の分配が出資者に支払われる仕組みになっています。

DAOに蓄積された利益は、次の物件(再投資先)へと活用され、各物件で生まれた利益が、リワードトークンを保有している人たちに「社員優待」という形で分配されます。この分配額は、元の物件で発行されたトークンの保有量に応じて変動します。

また、投資のフェーズによって優待の受け取り方が異なる点も特徴です。

  • 第一号ファンドの社内優待は、社員権を持っている人(出資者)のみに支払われる。
  • しかし、第二号以降のファンドの社内優待では、コントリビューター(事業に貢献した人)にも配当が入る可能性がある。

これは、投資者だけでなく、DAOの発展に貢献した人も報われる仕組みになっているためです。リワードトークンの魅力は、DAOの成長とともにリターンが拡大することにあります。具体的には、新たな投資や事業の拡大によって、関係者が増えるほど、次の物件から得られる配当も増えていくのです。

結果として、宿を盛り上げている人(コントリビューター)が、単に出資した人よりも多くのリターンを得るケースもありうるという仕組みになっています。また、リワードトークンは長期的に保有すればするほど、その価値が高まる可能性がある ため、初期から関わっているほど、より大きなリターンが期待できるというメリットもあります。

「すぐに使う」よりも「持ち続ける」ことで、より多くの恩恵を受けられる仕組みが特徴ですね。

さわくん
にわかよりも古参オタクが幸せになる、ということ。

山田健太郎さん
その通りです笑

FiNANCiEとの違いは?Re: Asset DAOの位置づけ

さわくん
持続可能な推し活のようなものですね。

プロジェクトを応援し投資するDAOといえば、「FiNANCiE」も有名ですが、Re: Asset DAOとはどう違うんでしょうか。

山田健太郎さん

FiNANCiEはプラットフォームビジネスですね。多数の人々から資金調達をする点は同じですが、FiNANCiEのトークンは日本円に換金可能で、日本円⇄トークンのトランザクションに手数料が発生します。

一方、Re: Asset DAOでは円と直接交換できませんが、その代わりにコミュニティ内の価値あるものと交換できる仕組みになっています。また、最終的に上場を目指すことで、将来的には円との交換も可能になることを想定しています。

僕としては、Re: Asset DAOは「FiNANCiE」と「KABU&」の中間に位置すると考えています。

  • KABU& では、保有している株は上場するまで日本円に交換できない。
  • FiNANCiE では、トークンをすぐに円と交換できる。
  • Re: Asset DAO は、「ゆっくりと円と交換できる」仕組みになっている。

こうしたスキームの違いが、それぞれの特性になっているんですよね。

さわくん
Re: Asset DAOでは宿泊権が現金に換えられるため、完全に現金と切り離されているわけではないのですよね。

山田健太郎さん
そうです。トークンは宿泊券と交換でき、さらにその宿泊券は自由に売買可能です。僕たちは、この取引の場として、Booking.comやAirbnbといったOTA(オンライン旅行代理店)サイトを活用しています。

Re: Asset DAOのトークンが日本円と結びついていないメリット

さわくん
Re: Asset DAOのトークンが日本円と直接結びついていないことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

山田健太郎さん
これは事業者にとって大きなメリットがあります。

トークンをすぐに円に交換できるようにすると、投機目的の投資家が増え、事業の安定性が損なわれることが多いんです。短期的な利益を狙う人が大量に流入すると、市場が荒れ、地域の価値向上を本気で考えている投資家が入りにくくなる。

その点、Re: Asset DAOではトークンがすぐに現金化されないため、本当に地域に関心を持つ人が投資に参加しやすい仕組みになっています。結果として、事業者にとって安定した資金調達が可能になるというメリットがあります。

また、一般的な融資とは異なり、Re: Asset DAOではお金を返す必要がありません。その代わりに、株のようなトークンをリターンとして投資家に提供する仕組みになっています。事業者側から見ると、お金が外部に流出せずに内部に蓄積されやすく、その利益をもとに次の事業を展開できるため、回転スピードが速くなるのがポイントです。

これまでの形では、

  • 融資元への返済負担が大きく、思うように経営できない
  • 古民家の価値が金融機関に認められず、融資を受けにくい
  • 修繕費用の積み上げなど、ランニングコストが経営を圧迫する

といった問題があり、まちづくりを中心に据えた経営はリスクだらけでした。DAOの仕組みを活用することで、そのリスクを分散し、じっくりと自由な経営ができるようになったのです。

Re: Asset DAOが生み出す「東洋的な投資」

さわくん
その町がどれだけの価値を持つかを、資本主義の指標だけで測ろうとすると、多くの価値を取りこぼしてしまうはずです。Re: Asset DAOには、短期的な投資ではなく、長期的な投資を通じて「取りこぼされる価値を拾い上げたい」と考える人たちが集まっている。いわば「町という盆栽を育てたい人たち」が参加しているイメージですね。

そもそも、資本を拡大することが目的の「投資」と、東洋的な価値観は相性が悪かったと思います。しかし、Re: Asset DAOのスキームでは「プロセスに価値を置く投資」が可能になる

今、企業や国家が大量生産・大量消費の資本主義から、「プロセスを重視する価値観」へと移り変わるタイミングに来ています。この流れの中で、新しい投資の形を模索する動きが強まっている。そのとき、Re: Asset DAOのような仕組みが、逆転勝利していくのかもしれません。

山田健太郎さん
本当にその通りです。これまで見過ごされてきた価値を、合同会社型DAOの仕組みを通じて拾い上げる。そういう未来を、僕たちは目指しています。

「Re: Asset DAO 小豆島プロジェクト」オープンチャットはこちら

現在進行中のDAOプロジェクトである「Re: Asset DAO 小豆島プロジェクト」。

以下のオープンチャットから、プロジェクトの動向やDAOに関するトレンドが追えるので、是非ご参加ください↓

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