
- 語り手:山田健太郎さん(Re: Asset DAO合同会社代表)
- 聞き手:さわくん(ランニングホームラン株式会社「コンセプト神」/DAOの哲学的側面を研究中)
Contents
「ただの出資者」ではない!合同会社型DAOならではの意思決定の仕組み
さわくん:
DAOでは、どのように意思決定が行われるのでしょうか?
投票権の仕組みについて詳しく教えてください。
山田健太郎さん:
Re: Asset DAOでは、意思決定の重要度に応じて投票権のレベルが異なる仕組みを採用しています。
- レベル1〜3:比較的小規模な意思決定(宿の運営上の調整、設備投資など)
- レベル4〜5:会社の存続、次の投資先の決定など、DAO全体の方向性を左右する重要な決議
特にレベル4〜5の意思決定は、社員権を持っている投資家や、DAOに大きく貢献しているコントリビューターが参加できる仕組みになっています。つまり、ただお金を出した人だけでなく、DAOの価値向上に貢献している人も重要な決定に携われるというのが特徴です。
この仕組みにより、DAOは単なる投資案件ではなく、「関わることで価値が生まれる経済圏」となっているのです。

DAOの経営は難しい?合同会社型DAOの課題とは
山田健太郎さん:
合同会社型DAOを運営する上での難しさは、トークンの価値を維持しながら、投資家の期待に応える事業計画を立てることにあります。
DAOでは、内部にキャッシュが貯まっていくため、「とりあえずトークンを投資家に配布しておけばいいのでは?」という考えが生まれがちです。しかし、それでは事業としての成長が鈍化し、十分な推進力が生まれにくいという課題もあります。
また、トークンの価値は、宿の運営状況やDAO全体のプロジェクト進行に大きく影響を受けます。各物件の収益や地域との関係性、まちみがきの進展度合いなど、プロジェクトの成功がトークンの価値向上に直結する仕組みになっているのです。そのため、投資家の期待を上回る形でDAOの経済圏の価値を高めていくためには、単なる資金調達だけでなく、宿のブランド価値を高め、地域との協力関係を強化する長期的な戦略が不可欠になります。
DAOは「信頼」が命!立ち上げ時に必要な工夫とは
山田健太郎さん:
DAOは分散的な意思決定が強みですが、立ち上げ時には「信頼の獲得」が最重要課題になります。
特に初期フェーズでは、DAOの仕組み自体が新しいため、投資家の不安を取り除くことが不可欠です。そのため、投資家からの信頼を得るために、立ち上げ時には事業の安定性を示すために、一部の経済的インセンティブ(法定通貨での報酬など)を用意することもあります。この点で、合同会社型DAOはクラウドファンディングと似た課題を抱えています。融資の場合、合理的な判断基準で資金を供給できますが、合同会社型DAOでは投資家の感情も考慮しながら運営する必要があるのです。そのため、合同会社型DAOの設計には、合理的な資本管理だけでなく、「信頼を積み重ねるプロセス」も欠かせないというのが難しいところですね。
なぜ日本と海外で「トークンの売り方」を変えるのか?
さわくん:
海外と日本では、トークンの売り方を分けていると聞きました。
それは、投資家の考え方の違いによるものなのでしょうか?それとも別の理由があるのでしょうか?
山田健太郎さん:
トークンの売り方を変えている一番の理由は、国や地域ごとの法律に対応するための調整が必要だからです。DAOの社員権トークンは有価証券に該当するため、各国の規制に基づいた適切な運用が求められます。つまり、どの国でも自由に売買できるわけではないという点が大きな違いです。
そのため、Re: Asset DAOでは以下のように売り方を調整しています。
- 海外向け:短期売却が可能な投資家向けの設計
- 国内向け:小豆島の経営に長期的に関わる投資家向けの設計
特に日本国内では、DAOのビジョンに共感し、「単なる投資ではなく、長期的にプロジェクトに関わりたい人」を重視しています。そのため、海外のように短期売却を前提とした仕組みにはなっていません。

小豆島だけじゃない!DAOによる地域活性の未来とは?
さわくん:
Re: Asset DAOは小豆島で運営されていますが、今後、ほかの地域にも広がる可能性はありますか?
山田健太郎さん:
現時点では、小豆島に特化したDAOとして運営していますが、将来的には並行して他の地域にも展開していきます。ただし、このDAOのスキーム自体がまだ新しく、どの地域にも適用できるかどうかは慎重に判断する必要があります。
もし他の地域に展開する場合は、
- 小豆島と同じ法人で運営するか?
- 新しい法人を立ち上げるのか?
といった点も含め、DAOの設計を柔軟に見直しながら進めていきます。
小豆島のプロジェクトが成功し、DAO型のまちづくりが確立できれば、次の地域への展開も現実的になってくるでしょう。投資家として関わることで、地域活性の新しいモデルを一緒に創ることができるのが、このDAOの魅力です。
「囲む」をテーマにした宿「囲み宿 こわね」

さわくん:
DAOの運営について詳しく伺いました。
では、実際に小豆島でどんな宿を経営しているのか、聞かせてください。
山田健太郎さん:
僕たちが運営しているのは、築100年の古民家を活用した和風モダンな宿です。この宿は、単なる宿泊施設ではなく、「人と人が自然に会話できる場」をつくることを目的としています。宿泊者同士はもちろん、地域の人たちともつながることができるのが特徴です。例えば、お隣にあるバーには地元の方々も集まり、宿泊者と自然に交流が生まれることも多いんです。
この宿の名前は[「囲み宿こわね」](https://www.instagram.com/kowane.shodoshima/ )。「囲む」という言葉には、人や物、風土や風情を共有するという意味が込められています。現代の宿泊施設では、それぞれがスマホを見ながら過ごすことが当たり前になっていますが、「こわね」では、宿泊者が自然と会話し、交流できる場をつくることを大切にしています。
宿の中では、隣の人の話し声がふと聞こえてきたり、気づけばそこにいる人たちと談笑していたり。そういう、「人と人とのつながり」を楽しむ体験ができる場所なんです。
この宿では、単に泊まるだけではなく、「場の力」で自然に生まれるコミュニケーションを大切にしたいと思っています。非日常の空間で、ただSNSの画面に集中するのではなく、そこにいる人たちとのつながりを感じられる体験を提供する宿。
それが「囲み宿 こわね」の目指す宿の形です。

DAOにブロックチェーンは必要か?Re: Asset DAOの活用戦略
さわくん:
合同会社型DAOといっても、ブロックチェーン技術の活用度合いはプロジェクトによって異なりますよね。Re: Asset DAOでは、どの部分でブロックチェーンを活用しているのでしょうか?
山田健太郎さん:
Re: Asset DAOは、DAOの理念をベースにしながらも、完全な分散型というわけではありません。
現在の運営では、
- ブロックチェーン技術を活用した組織運営
- リワードトークンを発行し、投資家やコントリビューターに配分
という形を取っています。
ただし、スマートコントラクトの実装は、まだ行っていません。事業が拡大し、より多くの投資家が参加する段階になれば、スマートコントラクトを導入し、資金の流れをより透明化していく予定です。
現在の段階では、
- 日々の運営に関する細かい調整はオープンチャットで実施
- 大きな資金の使い道は、スマートコントラクトを搭載したサービスで管理
という形で運用しています。つまり、今後DAOが成長し、より多くの投資家が関わることで、ガバナンスが強化されていく設計になっているということです。投資することで、単にリターンを得るだけでなく、DAOの成長過程にも参加できるのが、この仕組みの面白いところですね。
「投資家」「経営者」「協働者」──Re: Asset DAOに関わる3つの立場
さわくん:
合同会社型DAOには、「業務執行社員」「社員」「コントリビューター」の3つの立場があると聞きました。それぞれの役割の違いを教えてください。
山田健太郎さん:
合同会社型DAOでは、投資した人が社員権を持ち、意思決定に関わるのが大きな特徴です。一般的な会社で言うと、次のような役割分担になっています。

コントリビューターは、たとえばマーケティング戦略の立案や、宿の写真撮影、イベント運営などでDAOに貢献します。業務時間ではなくスキルや価値提供の量によって報酬を得るのが特徴です。また、宿泊者もコントリビューターとして参加できる仕組みがあります。例えば「宿に泊まりながら清掃を手伝うと、宿泊費の一部が還元される」といったインセンティブがあり、ただの利用者ではなく、運営の一部を担うことができるんです。
DAOが拓く「分かち合いの経営」──投資ではなく、未来へのコミットメント
小豆島で始まったRe: Asset DAOの取り組みは、単なる宿泊事業ではない。人と地域、そして経済をつなぐ新しい形のコミュニティ投資だ。
DAOの仕組みを通じて、「価値の最大化」に貢献する人が正当に評価され、トークンによって経済的リターンを得ることができる。そして、その利益は次の事業に再投資される
これまでの資本主義の形では、「投資家」と「経営者」は分断され、投資家は株価を追い、経営者は利益の拡大を求める関係にあった。しかし、合同会社型DAOの考え方では「経営者」も「投資家」も「協働者」も、共に未来をつくる当事者である。
DAO型のまちづくりが、どこまで広がるかはまだ未知数だ。しかし、この小豆島の取り組みが、全国の地域活性化の新たなモデルケースになるかもしれない。
ここで生まれた「囲み宿 こわね」のような場所が、次はあなたのまちにも生まれる日が来るかもしれない。

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